« 富士見ゆかりのシルクガール | トップページ | 亀太郎さんのアルパカ »

「サウダーヂ」という映画

 ステップアップゼミでは、5年前くらいまで、他の団体と協力して地域づくりに関連するような映画の上映を行っていました。「タイマグラばあちゃん」「ザ・コーポレーション」「住井すゑ百歳の人間宣言」「ヒバクシャ世界の終わりに」「あの鷹巣町のその後」「バークレー市民が作る町」など動員は大変でしたが、今思うとよくやったなと・・・。動員の問題もありますが、映画や講演会というのは、その時だけ盛り上がり、継続性に疑問を感じていたので、その後は手を出しませんでした。

 また、映画は個人的な趣味の要素が強く、あまりこのブログでも取り上げませんでした。しかし、今回、とてもいい映画に出会いましたので、紹介させていただきます。

Photo

 Photo_2

   結構、話題になっているので、観た方も多いかと思います。甲府が舞台の映画で、土方、HIPHOP、外国人労働者などの群像劇です。3時間近い作品でしたが、「あるある」というような笑えるエピソード(それもかなりお間抜けな感じ)が、コラージュのように描かれていて、時間はあっという間に経ちます。映画の中で、「これが問題だ」とテーマは語られる事はありません。しかし、地方の空洞化と言うよく言われる言説の、本当の姿みたいなものがシッカリと伝わってくるんですね。

 そして、登場する、土方もHIPHOPも外国人労働者もおっさんもアラフォーもラブ&ピースを掲げるスピリチュアル派もそれぞれにコミュニケーションが成立せずに、ただただ孤立化していて、全く出口が見えない。

 たとえば、主人公の一人、30代くらいの土方が、タイパブにはまっていて、クソみたいな日本を捨てて、タイ人ホステスとタイ(たぶん彼の中では「微笑みの国」タイみたいなイメージ)で暮らしたいと思ってるんですが、ホステスの方は、クソみたいな(たぶん)タイから、憧れを持って日本に来ている。双方の希望はクロスしてしまってすれ違ってしまう。

 そんな、ディスコミ状況が随所にちりばめられていて、どこにも希望なんて無い。

 当方、10年ほど前まで甲府近郊の工場に工員として勤めていたことがあり、東京に近いだけに、救いの無い甲府というものを少しは知っていますが、その時より状況はひどくなっている。空洞化している地方都市の中でも、たぶんピカイチなのではないかな。

 なんだかまとまらなくなってしまいましたが、この映画が面白いところは、ドキュメンタリーとフィクションの中間的な構成になっているところです。登場人物が映画的には素人で、はまり役が結構ある。

 背景を知らないとわからないことなんですが、

①HIPHOP:実際の地元で活動しているHIPHOPアーティスト(全国ツアーなどもやっている)が、そこに行ったらいけないという役柄(ナショナリズムに向かってしまい、排外的になる)を演じている。

②西洋かぶれのブライダルコンサルト:山梨でワインツーリズムを企画し、成功させた方が演じている。これも一歩間違えば、現実世界で西洋かぶれワインツーリズムという処へ着地しかねない。

③「人と人のつながりを大切に」と訴えるうさんくさい国会議員立候補予定者:社会学者の宮台真司さんが演じています。これも一歩間違えると危ない。そのうち、政治家になりそうですよね。

 これらの人たちの演技が光っていました。現実の世界で活躍している人に、自分の現実世界での足元を切り崩すような演技をさせていて、それがある種のリアルさに繫がっていて、とても緊張感のある仕上がりになってると思いました。

 この「自分の足元を切り崩すような視点」というのは、地域づくりでも大切な視点だと思います。地域づくりで陥りがちな視点に、足元を固めて、組織を作って・・・云々ってのがあります。組織が固まれば固まるほど、「地域をなんとかしていく」というところから、「組織をなんとかしていく」というところへ行きがちだからです。

 それゆえ、この素人の役者さんたちはこの仕事を請けたんだろうし、真剣な演技につながったんだと思います。

 そして、何で今回この映画を取り上げたかというと、映画の中で示されない「出口」が、映画の外で示されていると感じたからです。

 それは、この映画を作り方の中にあります。さっき触れた、ワインツーリズムの企画者(笹本さんといいます)が、この映画のプロデューサーになっていて、資金はほとんど、地元甲府から集めています。決して、「甲府はいいところだから皆来てください」などとは言っておらず、むしろ逆のメッセージを出しているこの映画にお金が集まる。

 もちろん、「国道20号線」という映画で知る人ぞ知る監督ですが、一般的には無名の監督です。

 この募金活動が、ワインツーリズムや、うちがこのところ関わっているフットパスのまちミュー等の周辺で行われてるんですね。そう、一人一人は出口が無く、希望も何も無いけれど、仲間が集まれば、こんな映画も出来ちゃうんだよ! って感じです。

 ちょっと単純化してしまいましたが、ここに出口があるような、それを言いたかったんじゃないか、そんな気がします(映画評論ではないので掘り下げが甘くて申し訳ないm(_ _)m)。

 もうひとつ、この監督さん、普段は長距離トラックの運転手をしていて、休みの日に映画を撮ってるとか。誰かの股をくぐったとしても、好きな映画で食うのか?食い扶持は他で稼いで、好きな映画を撮るのか?このへんも突きつけてきます。

 上映終了後のDVD販売には頼らない方針らしいので、上映だけでしか見られません。長野県内では3月11日の午後に松本で上映されます(松本シネマセレクトにて)。クライマックスのシーン(あるバンドの超有名曲がバックでかかります)では、ちゃんと涙腺がゆるみます。お見逃しなく。

|
|

« 富士見ゆかりのシルクガール | トップページ | 亀太郎さんのアルパカ »

映画」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。笹本貴之と申します。
遅ればせながら、この記事を先ほど拝見しました。
ありがとうございました。
地域と一言で言いますが、やはり分かりづらく、面倒なものだ、という実感がますます強くなり、日々悩みながら闘っています。
頑張りましょう!

投稿: 笹本 貴之 | 2014年3月18日 (火) 00時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/397928/44360173

この記事へのトラックバック一覧です: 「サウダーヂ」という映画:

« 富士見ゆかりのシルクガール | トップページ | 亀太郎さんのアルパカ »