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重てぇ~ イランの映画「別離」

 何とも重たい映画でした。出だしで提示されたテーマは、夫婦の離婚問題。イランの中流階級(らしい)の夫婦が、離婚調停らしきものを裁判所で争っている場面からスタート。次第に、その理由や、夫婦・家族の関係が説明されていきます。まあ、妻は「子供をイランで教育することには未来を感じられず、外国に出るべきと考えている」、夫は「教育については同じような考えもあるが、父親の介護があるため外国には行けない」という理由で、夫が海外へ移住できないので、離婚して妻と娘だけが海外に行きたい、そんな状況です。

Photo  

 この奥さん、なかなか美形ですね。失礼!!

 そんでもって、とりあえず、妻だけが、実家に帰ってしまう。で、介護(イランでは家庭で介護するのが一般的との説明が上映前にありました)のために、家政婦を雇います。この家政婦、いかにも貧しい階級といったいい味を出しています。

 で、見ていくうちに、多分子供の教育云々というのは建前であり、どうも妻自身も自分勝手な感じであることが明らかになっていきます。また、英語の教師(だったと思う)をしている妻に対する夫(銀行員)の態度も、フェアなようでいて、結構男尊女卑っぽい、みたいな内実がドロドロと噴出してきます。そこに家政婦の貧しさゆえのいろいろな言動が重なって、状況はこんがらがってきます。

 また、家政婦は、信仰に篤く、男性の介護(下の世話)をすることが、宗教的(イスラム教)に罪になるのではないかなどということでも悩みます。また、父親も目を離すと家を出て徘徊してしまいます。この徘徊は後で伏線になっていきます。

 そんな折に、父親をひとり置き去りにして、家政婦が外出し、そのあいだに、父親がベッドから落ちて気を失っているという事故が起きます。その際に、夫が家政婦をなじり、乱暴に扱ったことから、「事件」は動き出します。

 そして、最初は「離婚の愛憎映画」かぁ~、「介護映画」かぁ~、と思わせていたストリーが、にわかにサスペンスの色を濃くしていくのでした。「家政婦を乱暴に扱った夫は、家政婦が妊娠していたことを知っていたのか?」「なぜ、家政婦は外出したのか?」「父親が徘徊したときに家政婦に何が起こったのか?」 これらのことが、謎として立ち現れ、次第に解き明かされていくにつれ、嘘をついているのは、誰なのかということも明らかになっていきます。この辺は心理サスペンスとして、一級のものです。

 また、夫が娘に、裁判(「事件」は裁判にまで発展します)でどのように発言するかを、非常にずるいやり方で、示唆したりします。この娘は、結局両親のあいだで揺れ動き、良心のあり方で揺れ動きます。そう、とても重要なキーマンの役を、素晴らしい演技でこなしているんですね。これ見所の一つです。

  「事件」がひととおり収束したあとで、最後に、15歳の娘に、父と母のどちらと暮らすのかを裁判官が問う場面が出てきます。これ、私、実際に家庭裁判所でやったことあるんで、このことでどれほど子供が傷つくかということを、よ~く知っています。

 というか、たぶん忘れ去りたいので、忘却の彼方に放り投げてたことを、しっかり思い出させていただきました。 重てぇ~ なんも言えねぇ~ という気分でした。

 そして、それだけではなく、男尊女卑の雰囲気が充満しているイラン社会、グローバリズムによる格差(家政婦とその夫の生活が象徴的です)、教育程度によって権利の主張もままならない状況、「外国」に対するあ・こ・が・れ、自己主張することでドンドン貧しくなっていく心、信仰があることがいいのか、ない方がいいのか、そんなものもあぶりだしていきます。

 なんの救いもない、そんな映画でしたが、一瞬たりとも目をそらせない、素晴らしい映画でした。

 アカデミー外国語映画賞というものも、素晴らしい賞ですね。2009年のアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」も良かったですし・・・。

 

 

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