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「ふがいない僕は空を見た」 現代はこんな感じで生きづらい

 これは傑作です。間違いなく。

 お話は非常に過激なセクシャルな描写から始まります。その描写があまりにも話題性が強いものだから、若者の激しく突っ走る性をめぐる状況や現代の性のゆがみだけを追求したような作品と思われがちです。特に、コスプレに注目が集まりがち。ところがねぇ~、これが意外に深い。

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 それぞれの章は、それぞれの主人公の独白のように書かれています。それぞれが抱え込んでいる問題が、違ったものではあるのだけれど、実は、何らかの関連性を持っていて、結局、どの問題も答えを見つけ出せないという、そんなやるせない状況が垣間見えてしまいます。そして、そこに「僕」は「ふがいない自分」というものを見つけてしまいます。

 子供がなかなかできない若い主婦(そして、それを姑にチクチクやられる)、なんとなく生きている高校生、徘徊するおばあちゃんを残して失踪してしまった母親と捨てられたこども(もうひとりの高校生)、有名学習塾の人気教師だった極端な性癖を持つ先輩、生と死に向き合う助産婦、これらの人たちが、そこからに抜け出せない世界でもがいていきます。作者はたぶん、抜け出せない世界=古い団地に象徴させています。これがとてもうまいところです。

 先の見えない将来への不安、表面的にはとても幸福だが実は崩壊している家庭生活、どうにもならない老人介護の貧しさ、生命に携わっているという理想とそれをはき違えているような勘違いをしている人たち(自然分娩にこだわる妊婦)、どれをとっても状況は行き詰まっており、それは10年後、20年後の日本の縮図のように見えます。

 その上、事態は、ひどい方向へと進展してしまって・・・。その対象をいじめようとか、痛めつけようとか、そんなことは思わずに、自分の状況から抜け出したいがために、もがくような行動を、まるで日常のルーチンワークのように、あっさりとやってしまう一種の加害者。その行動によって、行き詰まり感がより一層深まってしまいます。実際、世にはびこる「イジメ」と言うのもこんなものかもしれないっていう、本質を見せていただいたような、そんな気がします。

 しかし、人間はそんな状況でも生きていかなければならない。どんなに厳しい現実にも、何らかの折り合いをつけて、前をむいて力強く生きていかなければならない。そんな風に開き直らないと、人生って途方もなく暗いモノになってしまうんじゃないかなぁ。最後にちょっとだけ希望の光が見えたような・・・見えないような・・・。

 今の時代を生きる若い人って、本当に辛いと思うよ。心から。

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