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ドキュメンタリーは原発の真実を語らない 「希望の国」 園子温監督

 いや~すごい映画でした。時事ネタで園子温作品としては今いちという前評判だったので、あんまり期待せずに見に行ったのいですが、率直に「とんでもなくよかった」です。

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 園子温監督の作品は、多分私ははまってしまうだろうと、ネット情報などから予感がしていました。なので、「愛のむきだし」あたりまでは敬遠していたのですね。しかし、「愛のむきだし」を見に行ってしまって、ほかの作品も追いかけて、今は見事にはまっているわけです。

 そして、今回の作品。題材が題材だけにどう料理するのかという点に、興味は行くわけです。でもね、しっかり園流に料理されてるんですね。随所に毒がもられていて、素晴らしかったです。これだけ作家性をしっかり出せる監督というのも、日本では稀有の存在ですね。

 この作品公開に先立って、宮台真司さんと対談などしていて、その中で、ドキュメンタリーの罪を語っていました。原発の問題をドキュメンタリー撮ることは、真実を切り取るというイメージだけで、本当の真実は、フィクションでしか描けない、というようなことをしきりに言っていました。この映画でそのことを見事に果たしていると思いまうす。

 また、あまたの原発映画(今のところ、ドキュメンタリーが圧倒的に多い)が、ある一定の正義の視点から作られていて、なんとも読後感(鑑賞後感とでも言えばいいのか)が悪いのだけど、この映画では、そういったところがとっても上手に処理されていて、そんなところがとてもよかったです。

 例えば、酪農家の若い妻が、妊娠している設定なのですが、非常に、過剰に放射能に対応している。その町で一人だけ、宇宙服のような格好で歩き、話題になってしまう。かかりつけの産婦人科の医者は、マスコミに出ている医者が嘘を言っていると認めながら、放射能恐怖症であることを告げるんですね。

 そんな感じで、過敏に反応してしまう人も、周りから同調圧力をかける一般ピープルの存在も、相対化していきます。この辺はドキュメンタリーの善⇔悪構図では描けないところではないでしょうか?たぶん脱原発派からは「お前はどっちの味方なんだ」と攻撃されるところでしょうが、現実はそんなにすっぱりわりきれるものではないのです。この辺の描き込みはお見事です。

 そうですねぇ。それと、園ワールドも随所に出てきます。「自殺サークル」での54人の女子高生が手をつないで、ホームから電車に飛び込むシーンや、「紀子の食卓」でレンタル家族がだんらんするシーンや、シュールなシーンを盛り込むその趣向。ここでも、大谷直子演じる、痴呆症の母親が町をさまよう場面で、畜舎から放たれ野生化している牛やヤギのあいだを徘徊しているシーン、津波によって空中にとどまっている、ダリの絵のような家屋(斜めに傾き、家の「底」が見えている)の前でプロポーズするシーン、そう言ったシュールなシーンが登場します。

 もちろん、庭の真ん中や、畑の真ん中に、立ち入り禁止のバリケードが出来ること自体、シュールです。まるでカフカか何かの世界です。

 思うんですが、被災地では、現実があまりにもシュールであるということなのでしょう。被災地=園ワールドなのですね。

 ここから完全にネタバレですが、展開から十分予想できるものなので(まあ、ベタという捉え方もできてしまう)、書いてしまいます。ラストに、「愛があるから大丈夫」という言葉が語られます。これは本当にベタな結末と言えてしまう。

 しかし、一応、弁護させていただきます。「愛」のありかたというのは、園監督の大きなテーマの一つであるのですね。「愛のむきだし」では、聖書まで持ち出して、愛を語っています。「紀子の食卓」でも、レンタル家族を通じて、一般的な、常識的な家庭のもつ家族のだんらんに象徴される、家族愛のイカサマ性や虚構を、するどく描き出しちゃってますし。

 なので、ここで「愛」を持ち出すのは、深~い背景があり、意味があることなのです。園作品を見ていない方は、過去にさかのぼって見てみてください。この映画の意味もそこから立ち現れてきますから。(ただ、「冷たい熱帯い魚」だけは、レンタルDVD店で自主規制かかっています・・・怪しい中国のダウンロードサイトで全編見ることはできます、ただしセクシーなシーンは中国の映倫?によってカットされてますが) 

 そして、まあ、酪農家ということで、冒頭から容易に予測できるんですが、家畜の殺処分のシーンも出てきます。ただ、ここで園監督は自主規制してしまっています。例のごとくの残酷で、血まみれのシーンは出てきません。たぶんこの映画をできるだけ多くの劇場で上映したかったんでしょう。R指定になってしまえば、「冷たい熱帯魚」と同じ、僅かな劇場でしか上映できない&レンタルDVD店の店頭にない、という憂き目を見てしまいますから。というわけで、園監督の持つ、「美しい残酷」という芸術性は犠牲になっています。

 まあ、とにかく機会を作ってみてください。あとにもさきにも、「フクシマ」を描ききれてるのは、この映画だけでしょう。そういう映画です。

  

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