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「桐島、部活やめるってよ」 身も蓋もないこの世の中

 なんとか、身近の最終上映に間に合い、スクリーンで観ることができました。評判通りの映画でした。非常に良い意味で。もちろん、昨今あふれている、スイングガールズの二番煎じのような青春映画ではありません。

 評判といっても、できるだけネットに出てくる批評めいたものは読まないようにして観に行きましたので、自分なりの捉え方が出来たと思います。

 お話は、桐島という、勉強もでき、イケメンで、彼女もいるというバレー部キャプテン(高校生)が、突然部活をやめるという噂が流れ、本人は一度も現れず、周囲の騒動が描かれていきます。まあ、「桐島」というのが、ひとつの記号のように、周囲の人たちに影響を与えていく感じです。

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 イケメンで勉強もスポーツもでき、背も高くて、女の子にもてて、という高校生と、文化部の地味な活動をする高校生(吹奏楽部がそれにあたります)、オタク的な文化部(映画部)、スポーツに打ち込む努力の人(野球部=これはちょっとダサク描かれています)、こんな高校生たちが、一種の階級社会のようなものを作っています。まあ、高校の頃を思い出せば、まさにその通りで、私も、努力しない柔道部兼さぼり帰宅部だったので、なんとなく、そんな壁があったように、感じます。

 で、ネット上では、そんな高校生活では、頂点にあるような人気者が実は空っぽで、オタクや、文化部や、野球部なんかが、自分らしく生きてるんだよ、みたいな捉え方をしている方が多いです。私もそう言うわかりやすい側面もあるとは思いますが、逆に、世の中は、そういった、うまく立ち回る、人気者が結局はいい思いをできるんだよという事例で溢れているじゃないですか?そこに重点が置かれている、身も蓋もない映画なんですね。

 登場人物のセリフがそれを現しているようで・・・。

 イケメン人気者高校生:「できる奴はなんでもできるし、できない奴はなんでもできない、ただそれだけだろ」

 タカビーの女子、桐島の彼女(桐島がバレー部のことをなんていったか、バレー部員に聞かれて):「(あなたたちのことなんて) 眼中にないんじゃない」

 で、弱者の遠吠えのように聞こえるセリフは、

 映画部のオタク、サッカーで相手にされずに:「授業で何点入れたかなんて、大したことじゃない。Jリーグにでもいけるわけじゃないんだから」

 悩めるバトミントン部女子、タカビーな女子たちとつるんだあとで:「あの人たちに本当のことを言ってもしょうがないから」

 こんな感じで、学校には同調圧力が満ち満ちているんですね。あ~あのいやらしい人間関係から、逃げ出したかったのは、そのためだったんだ。妙に納得。

 しかし、現実は、いかにイケメンで勉強もスポーツもできちゃいますというやからが空っぽだとしても、そう言うなんでもできる高校生が、どこでもいいからという感じでいい大学に行って、いい会社に入って(こんな言葉、死語だと思うでしょ、そうでもないんだな)、いい思いをしてたりするのが、世の中でありまして、才能のないものは、報われないのが分かっていても、努力するしかないんですね。そしてそれは、高校生あたりで決まってしまう。そんなあたりを赤裸々に描いているのがこの作品なのです。

 学校、特に高校は、そう言った意味で、人生の縮図のような場所であり、それだから、同調しない者に対して、いじめという形で、力がそそがれてしまうんでしょうね。やりきれない、そんな映画ですが、見るべき!!  そう思います。

 そうそう、映画としても非常にいい作り方をしていて、最初に暗転して「金曜日」とか出るのですが、次の暗転でも「金曜日」、一週間経ったのかと思いきや、同じ日で微妙に視点を変えて、出来事を違う人間の視点から描くんです。これ新鮮でしたし、うまい。まるで、ミルフィーユのように、ある場面では見えなかったところで、物語の重要なファクターが語られている。それを重ねることで、出来事の本質がうかび上がってくるんですね。この辺も見所です。監督、いいですね。

 

 

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