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オディアールの「君と歩く世界」

 ジャック・オディアールは好きな監督のひとりです。といっても2作しか観てないですが・・・。自分の中では、なんて言うか、作家性というか、観ればすぐ、この監督とわかる特徴があって、それでいてワンパターンではないというのが条件のような感じです。

 で、この作品、裏のモチーフになっているのは、やはりフランスの抱える闇です。「真夜中のピアニスト」では不動産業である主人公が絡む“地上げ”であり、「預言者」では刑務所の中をしきっている“コルシカのマフィア”でしたが、今回は“賭け格闘技”の世界と、“移民と貧困”です。

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 もう予告編なんかでは、ただただ足を失った女性のお涙頂戴映画かぁ?と思わせてくれましたが(またはお涙純愛映画)、どっこい、なかなか骨太ないい映画でした。主役は、絶対、筋肉○○チックなこの男性の方です。もう最初から、子供を殴る、人生に対する単純な思考、喧嘩になったらほとばしる闘争心、と飛ばしていきます。

 この女性(マリオン・コティヤール)が足を失ってしまう話は、サイドストーリーに過ぎなくて、アリ(男性の劇中名)の成長が主題になっている印象。物語は淡々と進むんですが、随所に登場人物たちの、感情がほとばしっているシーンが散りばめられます。そうやってほとばしらせたあと、人間として、今まで理解できなかった、人間関係や、人生に機微、人に対する愛情なんかを、文字通り“学習”していくのです。

 そのほとばしりが尋常でないあたりが、この監督の作風の特徴とも言えます。

 そして、南フランスの陽光。南フランスなんか行ったことないですが、この太陽のまぶしさが、本能的に生きるアリには似合っているんですね。太陽が眩しかったから、人を殺した・・・みたいな(劇中では殺しませんが)。

 この男優さん、新人らしいのですが、この男のおバカさかげんを、いい感じで表現しています。足を失った彼女と親密になり、ディスコに連れて行くんですが、そこで、別の女の子をナンパして、「先に帰るよ」とか言ってしけこみます。翌日、彼女に、嫉妬バリバリで「昨日はどうだったの」と聞かれるんですが、何食わぬ顔で「普通だよ」(ノマルって言ってました)みたいに、答える。まあ、いいです。その単純さ、何も考えていないっていうところが。

 また、格闘技で殴り出すと、もう闘争心で自分を抑えきれなくなる。このあたりも秀逸。暴力を肯定的に描いていて、また、そういうものにどうしても惹かれてしまう女性というものも、心理描写を絡めて、きめ細かく描き込みます。当初、とても理知的な“デキる女”っぽく行動していた彼女も、アリのマネージャーになって、賭け格闘技で一端の「顔」になっていきます。

 いやあ、いい監督にめぐりあいました。目が離せないかな。

 

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