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今世紀最高の・・・に似つかわしいとほんとに思った 「2666」

 これは、もしかして怖いかもしれない。なんてったって、分厚いのだ。2段組みで900ページ近い、持って歩くのも憂鬱な本だ。

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 お話は、謎の作家、アルチンボルディをめぐる物語だ。この作家、どこかに行方不明状態なのだが、その作家の研究者の男女三人の三角関係からスタートする。これだけでもなかなかいい小説なのだけれど、第2部はそこに出てくる批評家の物語になり、第3部はアメリカ人記者のメキシコ訪問記、そしてお次は、メキシコでの連続殺人事件、そのあと、次第にアルチンボルディという作家がなにものであるかが、明らかになり、それまでのこれらの物語が、織物のように一つに織り上げられていくのだ。

 物語の錯綜具合は、もうとんでもないレベル。特に、連続殺人の描写は、この作家の殺人フェチ具合がよく出ている。まるで、何人死ねば気が済むのだろう状態で、ルーチンワークのように殺人事件が起こり、警察は適当に犯人を決め付けていく。いくつもある伏線はつながっていき、ラストの思いがけない顛末へと、読者を連れて行く。

 そしての壮大な物語の中に、戦争というのに弄ばされた若者の悪夢と、どこまでも続く苦悩を描き切っている。この描写は今まで読んだどの反戦小説、戦争の描写のある小説のどれをも凌駕している。すごいよ。

 もうひとつ、そのアルチンボルディがなぜ作家になるに至ったか。あこがれの作家がいて、それを追っていて・・・このあたり、架空の作家が架空の作家を求めて追っていく。アルチンボルディの存在自体が架空なので、架空の入れ子構造になっているのだ。もうここら辺は、スタニラフ・レムの「完全なる真空」といい勝負だ。あれは結構読むのにしんどかったが、これはそこが面白く、作家の力量たるやすごいんでないかと思う。それも、実際の社会状況に沿って、架空っているので、まあ、エミール・クリトリッツァの「アンダーグラウンド」のチトーが出てくるシーンのような感じだ。茶番になるところをギリギリ、パロディーの要素を含んだ架空の状況へと変換できてる感じ。それでいて結構真面目でそれらしく、面白い。

 これだけの本を読めば、征服感まで出てくるから不思議だ。作者の構成力というか、構成に当たっての、粘り強さはなんなんだ。これだけの大作を構成し、全体にテーマを織り込んでみせる芸当ってなんなんだろう。まさに真の作家と呼ぶにふさわしい。ロベルト・ボラーニョ・・・覚えておこう。

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