« 懐かしい映画 「アナザー・カントリー」 | トップページ | ガイドブック蔦木宿の取材が始まりました »

「1968」 上   

 「1972」「2666」の次は「1968」です。これで、「1984」とか「1Q84」とか読めば、なんだかわからなくなってきますが・・・。また、「2666」は900ページでしたが、「1968」の方は訳注入れると1000ページ。だんだん質より量になってくような・・・。いや、中身もちゃんとありました。

 Photo_2

 さて、表紙がなんとも軟弱ですね。で、これが、全共闘運動のイメージとして、なんとなく正しいことが、この上巻を読むことで、ある程度明らかになっていくんです。

 表紙の彼女は、こんな大集会の中にたち、髪の毛をいじりながら、何えを考えているのでしょうか?加入しているサークル(どっかの地歴研みたいです)にいる運動しているかっこいい彼のこと? それとも、こんなヘルメットより、第4インターのあの鎌と槌の方がおしゃれかななんて思ってるのでしょうか? 

 それぞれの運動に関わっている、若者たち(学生に限らないので)はその場その場で、真剣に取り組んでいた、というのはよくわかります。しかし、実際にそこに関わっていた人数というのは、本当に限られていて、「全共闘世代」なんてのが嘘っぱちであることが、とりあえず暴露されていきます。といっても、この論調は割と最近世に溢れています。

 また、これは団塊の世代にも通じることで、いま社会の中枢にいる云々というのは実は嘘っぱちで、いることはいますが、それは団塊の世代のごく一部のエリート。団塊の・・・のほとんどは、集団就職列車などで、上京してきた、京浜工業地帯などに就職した工場労働者だったというのは、今では誰でも知っています。世間に流れている一般的な解釈がいかにいい加減なものであるのかというのは、こういう例でもよくわかります。

 で、この本の中でも(とりあえず、上巻なので、東大闘争までしか描かれていませんが)、70年安保と言われているもの(1968年に始まった)が、60年安保とは(その動員や、曲がりなりにも政権を打倒した)、質的に全く異なるものであること。その本質は、「自分探し」であったこと。そんなようなことを明らかにしていきます。

 まあ、各大学の学費値上げなどに対する反対運動→全共闘→連合赤軍で終焉といった流れに対しては、疑問には思いますが・・・。「→連合赤軍」というのは主流ではないからかな。

 ネットでは、文献から丁寧にすくい上げただけで、まだ、関係者がいきているのだから、オーラルヒストリーの手法も使うべきだった・・・などという批判もされています。そういうことはあることはあるけれど、現在の様々な運動や地域づくりなども、ここにルーツがあると言えることは確かで、そう言う意味でも、読む価値があるものです。もちろん歴史書としても面白いですし。

 慶應・早稲田は学費値上げ、横浜国大は学部名称、日大は不正経理、東大は医学部の研修医制度、と、それぞれの大学で、火種になっている事象が違い、その大学の特徴がそこに出てくるところも、面白く読めました。

 もう一つ、仕事として、文章を書く事の難しさ。これを痛感しました。こういったブログなんかは適当に書き散らかしても、なんということもないですが、これだけの分量の文章を書いて、なおかつ、いろいろ突っ込まれないように(もちろんこの本については突っ込まれているようですが)、配慮していくということはなみ大抵ではないなと、痛感したのでありました。

 まあ、読破するにあまりある、たいした本です。まだ、下巻これからなんですけど・・・。

 

|
|

« 懐かしい映画 「アナザー・カントリー」 | トップページ | ガイドブック蔦木宿の取材が始まりました »

今週の本棚」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/397928/52373549

この記事へのトラックバック一覧です: 「1968」 上   :

« 懐かしい映画 「アナザー・カントリー」 | トップページ | ガイドブック蔦木宿の取材が始まりました »