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出ました 今年No.1 「ももいろそらを」

いやいや、出ました。今年もこれがベストという映画が。

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 斬新で緻密な構成、それだけでなく、面白さも十分ある。女子高生を対象として撮影しているのに、青春映画の範疇を大きく超えている。手放しで絶賛です。
 物語は、とある個性的な(ほんとに個性的)、世の中を斜に構えてみるような女子高生が、財布を拾うところから始まります。その財布は、同じく高校生(といっても一流進学校かな)の男子のもの。しかし、30万円入っている。そのお金を、交番に届けなかったり、勝手に貸したり、女子高生“いずみ”はやりたい放題。仲間のとつるみながら、お金をどうするかということを軸に進んでいきます。

 いずみは、世の中があんまりよくないって事を、随所で、ひとりごちます。財布の男子は天下り官僚の息子ということで、「体制」呼ばわりしたり(体制ってほんとに女子高生が使う言葉なんだろうか)、釣堀でのお友達である、中年おっさんには、兄貴分のつもりになったり、見事なアウトサイダー振りを発揮します。
 しかしです。物語が進むにつれ、仲間の女子高生をだますような側に、自分を属させていきます。ここらへんがミソです。一種の入れ子構造になっていきます。自分が普段、厭だと思っている、大人の世界、それはいいかげんで、嘘ばっかで、偽善にあふれてて・・・そういうものだと思っているんですが、この風景が、まったく女子高生仲間の間でも、事態として起きてくるのです。

 いずみは、一途な友人をだまし、利用して、自分の借金(男子高校生の財布から、ちょろまかして人に貸したお金)を返そうとします。普段憎んでいるような大人の世界を、無意識のうちにやっちゃうのです。
 そしてこの女子高生たちの演技や台詞回しが、なんとも独特なんです。わざとらしくなく、わざとらしい言い方・・・ややこしいですが、そういう言い方なんですね。そこではこういうことも明らかにしちゃいます。いまの世の中の人々の話し振りが、劇画調になってきており、人と話すことが、テレビのドラマの登場人物か何かのように、わざとらしいんです。そういう風になってきているんだよということを僕らに一度提示します。その上で、それを、わざとらしくなく、演技力というか表現力というか、自然に表現していくんですね。ここ、この映画の勘所です。

 結局、中2病らしきいずみは、その一番なりたくない、大人の社会の真似事を、つるんでいる仲間に対して、無意識にやってしまうのです。それに気づいたときの、そぶりがすばらしい。釣堀で、釣り竿を水面に何度もたたきつけます。このシーンがとても印象に残ります。

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 こういった、素人っぽい役者(3人ともこれまでプロではない)の瞬発力的な演技力に、斬新な研ぎ澄まされたカメラワークが迫るのです。背景をボケボケにぼやかし、登場人物をクローズアップさせる手法、白黒の色のない画面、男子高校生をホモセクシャルに設定し「いずみの恋愛物語」にならないように焦点をずらすうまさ、劇中に出てくるエピソードや小物の設定もそこに焦点を合わせていきます。
 結局、いずみが「クソバカ」ばかりの世界と思っている社会が、自分も構成員の一人であることを知るんですね。まあ成長の物語ちゃあそうなんですが、映像の緻密な構造が、芸術映画・・・・というか、ヌーベルヴァーグの香り、あの知性が画面の隅々まで支配するような映像美、それほどまでに押しあげてるいるんですね。今年のベストワンに文句なく決定です。いや~~、すごい監督が出てきたなぁ。処女作だってよ、これ。

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