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マージナルな存在が社会を動かす 「漂白される社会」

 世の中を変えていく力は、マージナルな場所から沸きあがる、という日本民俗学の伝統的なテーゼに基づいて、丁寧にフィールドワークを積み重ねた、すばらしい本です。まあこの著者の慧眼には「フクシマ論」において敬服したわけですが、今回も期待を裏切りません。

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 もぐりこんでいる(この表現はぴったりなので)フィールドは、伊勢地方にある、伝統的な風待ち港「売春島」、偽装結婚で日本にくるフィリピーナたち、援助交際がデフレ化し、ついにはホームレス(といっても外見からはわからない)ギャルによる移動援デリ(援助交際デリバリー)として立ち現れてくるインタ-ネットカフェや深夜のファミレス、外国人実習生という隠された移民政策、シェアハウスという偽りの共同体、脱法ハーブという本質は違法薬物と何ら変わらない快楽の世界、そんなところにどっぷりと浸かって、その本質をレポートしてくれている。

 そしてそれらの危うい存在自体も、グローバリズムの中で、脱色され、清潔な世界の中に取り込まれてしまっている。そして、その一種の闇世界というのは、以前ならば、パワーの源であり、社会を変えるような、呪術的な力を持っていたというわけだ。この辺は、網野史観の婆娑羅や漂泊の旅芸人、無縁、公界の力と同じような理論で、網野史観を正統に継承しているのだ。

 社会から変革する力を奪ってしまう、現代社会のあり方は、どこまでエスカレートしていくのだろう。もしかするとそれは破滅への道なのではという、危機感が痛いほど伝わっていくる。しかし、マージナルな力は、押さえ込めば押さえ込むほど、表出してくるものでもあるわけで、筆者が心配するほど、私は深刻には受け止めてはいない。ただ、そのパワーは社会を変えるというところからは遠くへ、コントロールされていくのは明白ではある。

 そして、筆者は、権力者や巨大資本という大きな力によって、それらが抑圧されるわけではなく、「自由」や「平和」を求める、「豊かさ」を求める私たちのあり方そのものが、志向している世界であるという。自動的、自発的にそういう世界が構築されてしまうことが、現代の最も大きな危機だといえるわけで、それはそれで、空恐ろしい未来しか待ってないのだと思えてくるのだ。

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