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村上春樹の社会的な仕事「約束された場所で」

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村上春樹の小説はどちらかと言えば、現実を切り取っているようで、実は、現実からかけ離れた空想小説の要素も多く持っている。しかし、非常に社会的な仕事もいくつかしており、今回はそういう仕事を通して何を僕たちに伝えたいのか・・・と言うことを考えてみたい。

  この「約束された場所で」という本の中で、オウム真理教の信者に対する聞き書きを行っている。これに先駆けて、「アンダーグラウンド」と言う被害者への聞き書きを出しているが、私にとっては、こちらのほうが興味深い。まあ、あれだけの犯罪を幹部が実行してしまっているのだが、宗教としてそこに関わっているものには、自分たちの信心がまず大事であり、そのことを切々と語るその態度に、自分たち作家と同じ性状を感じ取っているあたりは鋭いと言える。そして、信者が教祖(麻原)に対して、絶対帰依していたかどうかと言うことにこだわった、聞き取り作業を丹念に続け、その本質を暴き出す。結局は、現代社会が持つ、疎外的な性質ゆえに、エリートが身に付けた技術や知識を、有意義な目的のために使えておらず、その不完全燃焼感が、オウムのようなカルトを作る遠因になっていると言う。それが、普通の市民である彼らが、絶対帰依に走ってしまう理由なのである。この辺は森達也の仕事ともかぶってくるわけで、対称的に世界観を語っている。それは、一種の現実逃避でもあるのだが、宗教の内部にユートピアを作ってしまい、そこに安住することで、心の平安を保つことになる。そして、この言葉で、締めくくる。「現実と言うのは、もともとが混乱や矛盾を含んで成立しているものであるのだし、混乱や矛盾を排除して、一見整合的に見える言葉や論理に従って、うまく現実の一部を排除できたと思っても、その排除された現実は、必ずどこかで待ち伏せして、あなたに復讐することでしょう」と。これは、至極あたりまえのことだと思う。

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