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再度 佐藤泰志

 佐藤泰志という作家がいます。このところ、二作品が映像化され、いずれも映画としても良いできだったので、俄然注目されています。小説の方もなかなかなので今回取り上げてみました。


 まずは、「もうひとつの朝」。これは、初期の作品で高校生の頃からの作品を手始めに、地元の「北方文芸」という同人誌に載ったものを中心に、短編を集めたものです。「市街戦のジャズメン」という伝説的な作品も読めますし、初期のまだ硬質の文章から、次第にこなれてくる様子がなんとなくわかるような作品集になっています。秀逸なのは、「深い夜から」という作品。映画館の従業員というけだるい日常の中で、次第に隠し切れなくなる、憎悪と暴力性。あげく、爆発させてしまう過程を丁寧なタッチで描きます。センテンスが短いのが佐藤泰志の特徴といえばいえる感じで、そのタイトな雰囲気は、丸山健二になぞらえられるでしょう。
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 次は映画としては、非常に話題になった、「そこのみにて光輝く」です。佐藤泰志の文学というものは、社会からはじき出され、もう堕落の底にあるような弱者の生でさえ、光り輝く場があるのだというような、ある種のやさしさ、寛容さを描いているというようなとらえ方をよくされているようです。しかし、私は、そんな甘っちょろいものではないと、感じました。そういった底辺にいる人たちを描くことで、佐藤泰志自身が抱えている孤独と、底辺で絶望の中にあえいでいる人たちの抱える孤独を、対比させているように感じたのでした。この手の孤独というものは、何か他のもので癒せるというような類のものではなく、それを抱えたら最後、行くところまで行かないと・・・といったたぐいのものだと思います。実際に佐藤泰志は、それをかかえたまま、自死してしまうのですが。映画でも、ほんの一筋の光が指す場面以外に、救いはありませんでした。

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