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夜明け前

 先日、馬籠宿から妻籠宿までの峠を取材で歩いたのですが、馬篭宿の中ほどに、島崎藤村の記念館がありました。ちょうど雨も降っていたので、入ってみました。なかなか素晴らしい展示、藤村の生い立ちから、晩年、この宿場を舞台にした「夜明け前」の執筆までの様々な事象がよくわかり、夜明け前の背景もおぼろげながら浮かんでくるような、そんな展示でした。

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 さて、その「夜明け前」ですが、学生時代に一度読んだことがあります。その時にも、なかなかすごい作品、特に幕末の動乱を、田舎の一人の人間が受け止めていく過程が面白かったことを覚えています。いろいろなサイトの中には、この作品をもって、日本の文学の中で数少ない世界文学・・・のように言っている人もいて、その感覚は私にも、感じられるところがありました。

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 ということで、今回、再度読んでみることにしたのです。おとなになったからわかる(笑)、重厚な文章と、ゆっくりとした物語の進み、そして、随所に織り込まれた伏線と思われる出来事。う~~んやはり、その当時、日本文学がノーベル賞の対象としてとらえられていれば、間違いなく受賞したはずです。それくらい、素晴らしい作品だといえます。そして、今、TPPによって、第三の開国といわれる状況が、目前まで迫って来ています。この信州の片田舎に住む私に取って、青山半蔵の心のうちの揺れ動きは、とても他人事とは思えないのです。

 歴史のうねりを、個人の中でどのようにとらえていくのか?そういうことに対して、ある種の答えを与えてくれるはずです。それとともに、それを消化しきれなかった青山半蔵が、狂気の世界へと自分を追い込んでしまった(実際にはただの老年性痴呆=アルツの症状ではないかという研究もありますが)その歴史というものの重み。

 そんなところから、現代という、情報を持て余している時代にこそ、この小説から得るものは大きいように感じました。いま、読むべき本といえるでしょう。

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