映画

汚れたミルク

 続けて同じ監督(ダニス・タノビッチ)さんの映画です。連続上映だったので。この映画は、世界的企業のネスレが作って第3世界に売り込んでいた、粉ミルクについて、パキスタンで雇われたセールスマンが内部告発するという内容になっています。やはり、この監督さんらしく、その告発劇を映像化するためのミーティングが舞台になっているという、劇中劇風のつくりになっていて、ちょっと付き合うのに、めんどくさいです(笑)。

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 ドキュメンタリー風に、時系列で事件(内部告発の)の内容がわかるように作ってあるので、ふむふむこういう内容かと・・・わかりやすいんですが・・・。これって普通に行われていることじゃん・・・なのです。粉ミルクの会社が、現地の医師に、お金やいろいろな便宜でとりいって、粉ミルクを患者や乳児を持つ母親に勧める。いわゆるマーケティングとか、リベートとか、そういった、ビジネスの世界では当たり前になっていることを、「いけないこと」として描きます。もちろん、汚れた水しか手に入らないパキスタンの実情があり、その汚れた水でミルクを溶かせば、汚れたミルクなわけで、そんなものを乳児に与えれば、病気になるのはあたりまえです。そのあたりまえが知っていてやっている犯罪として描かれるような、チープなイメージなんですが、そこで終わっていないのがこの作品のすごい所。ネスレが、映画の中で反論しているように、国民にきれいな水を供給できないパキスタン政府が悪い。ネスレの製品そのものに毒が入っているわけでもないし、欠陥品を売っているわけでももない。これは、そういえば言えることなんですね。

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 一見、そういったリベートを渡すという汚職のような構造を悪として描きながら、実はその本質的に「告発」したかったのは、資本主義のシステムそのものなんですね。ものを作って、宣伝して売ることを、「いけないこと」として、描いているんです。そう、ネスレ(劇中では一回だけネスレと出てきますが、あとは「ラスタ」社とされています)だけが悪いわけではない。資本主義の本質的なシステムが悪い。私たちがごくごく当たり前に受け入れている、宣伝されているものに信用を置く、とか、大きな会社のものは安心だ、とか、ことさらこの映画の中で強調されている、欧米のものへのあこがれ、とか、そういったものを批判している。こりゃ、問題作です。ここまで言っちゃってる映画ってあったっけ。そういう感じです。極左のプロパガンダ映画みたいなのを、娯楽作的に作っちゃってる。改めてこの監督のすごさを知りました。

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サラエヴォの銃声

 はい、久しぶりの映画です。今回はボスニアヘルツェゴビナの監督さんの作品。身体の下に地雷を埋められて、動けないあげく、もよおしてしまって・・・「ノー・マンズ・ランド」や民族の違いによって、独立やら、周辺の民族との関係やら複雑で、戦争が起きてしまったボスニアヘルツェゴビナの国内の少数民族の苦悩を扱った「鉄くず拾いの物語」などで知られる監督です。申し訳ないが、名前は覚えられません。調べました。ダニス・タノビッチ。その監督さんの最新作です。

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 お話は、第1次世界大戦の始まりとなった、あの発砲事件。オーストリアの皇太子夫妻が殺害されました。舞台はサラエヴォ。その事件から100周年を祝うというか、記念するイベントが開かれようとしています。ヨーロッパの首脳なども集まる様子で、宿泊先となるホテルは準備に大わらわといった風です。このホテルの内部が結構ドタバタしていて、大事な日を前にストが予定されていたりします。この旧ユーゴの地域の入り組んだ政治的背景は、僕らにはわからない世界なんですが、イベントの一環として、ジャーナリストがいろいろな人にインタビューしているという設定の映像が流れ、なんとなくですが、解説してくれます。

 ホテル内部の人間模様が、主たるテーマのように扱われ、群像劇ふうに進むので、最初はとっつきにくくて、眠くなります。しかし、次第に様子がわかってくると、手振れ風のカメラワークの影響もあって、緊張感が増してきて・・・

 この1914年の暗殺事件そのものが、失敗を重ねたうえで、ふとしたはずみに偶然が重なって、起きた事件というのが伏線にあります(その経緯は初めて知ったんですが)。そして、この映画の中でも、ふとした弾みの発砲で、銃声が・・・

 う~~ん。これは見終わって、史実を調べて初めて理解できるという、ひねりにひねった映画。どう評価したらいいんだろう?面白いかといえば面白いスリリングな映画でした。 

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「この世界の片隅に」

 日本のアニメです。昨年末に急に話題になったので、観てきました。11月の封切で、いきなりキネマ旬報の年間一位になったので、えっ、「君の名は」ではないのって、驚きましたが・・・。

 お話は戦争ものなんですが、主人公がちょっとトロい感じの女の子。まあ、こういう女性は多いですよね。特に当時は、ほんとにこうだったと思います。町で見染められて、嫁に欲しいと話が来る。そしてそれを受け入れる・・・みたいな。で、その生活が淡々とつづられていきます。反戦を大上段に構えるような作風でないのが、とても共感を呼びます。決して無関係ではないんですが、「私の上を静かに通り過ぎていく歴史」という感じのとらえ方が、たぶん民衆と歴史の関係としては、正しい認識なんだと思いました。僕らもそうですから。

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 そんな淡々とした中にも、身内が死んだり、爆撃を受けたりという、直接的な影響が重ねられていきます。その描写が、やはり控えめな印象を与えるように作られていて、すず(主人公はそういう名前です)の主観的な感情で綴られていくんです。それがたまらなく、普通で、自然体なんですね。考えてみれば、僕らも本当はそうなわけで、後付けの知識で、「なんで戦争に反対しなかったんだ」みたいなことを言いますが、大きな歴史の前では、個人は無力でしかないわけで、流れが反戦で動いていれば、それに乗ることもできたでしょうが、全くの逆の方向へと跳ね返すことは無理なわけです。そんなことを考えました。

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 とにかく、そういう意味では傑作です。「君の名は」(さすがにキネマ旬報のベストテンで圏外にするのはやりすぎと思っているので)とは、あまりにもかけ離れているので、くらべられませんが、かたや、世界に通用するアニメ、かたや心に染み入る、日本でしか通用しない(?)アニメ(たぶん、中国、や韓国から見れば・・・ですが)。そんな風に考えることにすれば、納得がいきます。

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チリの闘い

 ひっさしぶりに、ガチガチの硬派映画を見てきました。それにしてもフィルムがよく残っていた・・・。ほとんど奇跡のようなドキュメンタリーです。

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 お話は、三部作になっていて、第一部が「ブルジョワジーの叛乱」、二部が「クーデター」、三部が「民衆の力」となっています。選挙によって社会主義政権が生まれたチリで、アジェンダがどういう社会を作ろうとしていたか? そしてそれを露骨につぶそうと介入してくるアメリカ帝国主義。それに対して階級的に分断していたチリの国民がどのように思い、対処してきたのか? とにかく、今見てみると、わかりやすい介入と、そこまでするのという「アメリカ」の大国覇権主義が見事に描かれています。

 もちろんクーデターというのは、軍部、あの悪名高きピノチェトが指揮を執って起こされたのですが、このフィルムも、監督がたぶん亡命したんでしょうね。衝撃的なシーンは、クーデターまでしか残ってない感じで、すんごいのは、二部までです。ピノチェトを倒す闘いは描かれていません。三部はちょっと気抜けした感じですが、アジェンタを支持する国民が、国内経済が、国際的な反共経済封鎖などの影響で立ち行かなくなり、次第に自立していく過程を描いています。

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 これはこれで、これからの世界の行く末を暗示していますが・・・。偶然ってことでしょうね・・・これは。今の時代、国単位でも、経済状況や国のあり方をコントロールできなくなってきて、この民衆的な自立さえも、不可能になってきつつありますが・・・。まあ、」限られた地域での自立が唯一残された道かも知れません。

 それにしても、本番のクーデターの前に、余興のようなクーデターがあって、アジェンタも、たぶん自分の政権はこれによって倒されるという予感を十分持っていたと思います。それでも、法の中での革命を信じていたのでしょう。権力を持ち続けるには、ある程度の暴力装置を持っていないと・・・などという考えを持つこと自体、彼にとっては恥ずべき行為だったんだと思います。しかし、それがない政権はもろい。

 私も、アジェンダが殺されたことは知ってはいましたが、空爆で、大統領官邸をボコボコにされて、その空爆によってなくなったことまでは知りませんでした。象徴的ですね。アジャンダの最後は。こういう映画、地上波で上映してほしい。

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久しぶりの映画です。 空族の「国道20号線」

 ほんとに久しぶりになりますが、映画館になかなか行けずにもう年末。今回は、サウダーヂの空族(くぞく)富田監督の「国道20号線」です。空族は、新作「バンコクナイツ」が出来上がって、甲府で完成上映会が行われたんですが、ステルイチミヤが出るもんで、予約満杯。仕方なく、甲府の「へちま」という、フリースペース?で週一で上映している空族特集に行ってみました。

 

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 で、どんなだったかというと・・・。 サウダージより短い分、インパクトがねえ~すごかった。お話は、まあ、ヤンキーっぽい同棲カップルが、仕事もせず、パチスロばっかりやっちゃあ、シンナー吸って気持ちよくなってる。で、常に国道20号線が、何らかの終わりや始まりに出てくるちあと江波、ゅう、そういう映画。そのヤンキー二人の暮らしが、リアリティあふれてるっちゅうか、あるあるであふれてる。

 例えば、カラオケで歌ってる時のマイクの動かし方、パチスロで儲かってドンキに行って、しょうもない、装着おっぱい型を買ってしまったり、借金をまとめて友達の闇金で一本化したら、100万がすぐ300万になっちゃったり、たぶんこんな感じなんだろうなあという話が目白押し。最後はシャブうって、彼女の方は、死んじゃったのかなぁ。その、シャブうち後の、たぶん量多すぎで、体が震えちゃう場面なんぞは、新聞ブルブルいわせて迫真の演技。

 この映画について、誰かがブログに書いていたんだけど、「国道20号線はどこにもつながっていない」、そう、もう閉じられた閉鎖空間みたいなもんなのだよね。一度も地元から出ないで、地方で暮らすちゅうのは、そういうことなのかもしれないね。12月も、甲府の「へちま」で上映があるから、みてない人は是非どうぞ。この映画、傑作。で、上映に出あえるのは、すごい確率低いからね。

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キャロル 久しぶりに濃厚な映画を観た

 映画を観に行くのが久しぶり・・・(それだけフットパスガイドの取材に奔走しているということなのですが)で、濃~~いのを観ることができ、おなか一杯でした。

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 アカデミー有力候補ということで、平日にも関わらず混んでいました。

 で、映画のほうは、画面の細部までこだわりを詰め込んだ、濃厚なものでした。テーマも、女同士の恋という重いもの、そして時代は1950年代ということで、同性愛自体がほぼ御禁制だったころ。ストーリーは男女の恋愛ならば、ごくごくオーソドックスで、ありがちなラブストーリーですが、あちこちにちりばめられた差別的な視点が、映画全体に緊張感を持たせています。ケイト・ブランシェットは相変わらずのうまさを全開にして、若い娘(知らなかったが、ルーニー・マーラというらしい)テレーズも、いいです。ラブシーンは、自分は同性愛ではないのですが、ドキドキものでした。

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 こういうのを映画らしい映画というのでしょうね。王道をゆくことの勇気と、それを見事にこなしてしまっていることに感服です。テレーズが勤めたニューヨークタイムスの編集会議の様子も、こうなんていうか切り抜き感があって、程よいスパイスになってました。時代背景をくどく説明しないところが、かえってそれを想像させてる感じがして、敷居が低くなっています。観客を選ばない映画です。

 ただ一点、どうにもそう見えてしまって参ったのですが、キャロルが美輪明宏とダブってしまって・・・いけませんね。

 

見町には結構石造文化財があります。道の改修などで、一か所に集められているのが難点ですが

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フランシス・ハ

 基本的に、DVDは取り上げないようにしてるんだけど、あまりに素晴らしかったので、今回は・・・。昨年公開された映画です。とりあえず、タイトルは主人公の名前。で、「ハ」ってなんなんだろうって思いながら見ました。

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  まあ、最初から、主人公は飛ばします。仕事としたいダンサーはうまくいかない。ルームシェアしてる親友とも、急にわかれる羽目になる。で、自分で勝手に動くと、いろいろ裏目に出る。白黒で、一時のフランス映画っぽいですが、おしゃれなだけではない、新しさにあふれる映画でした。アメリカ映画なんだよね。それも切り取られてるのは、ニューヨークの今。

 主人公の周りとの軋轢は、あの「緑の光線」ぽい。で、モラトリアムぶり(ダメっぷり)は「コーヒーをめぐる冒険」の女版。手法は、ヌーヴェル・バーグぽいものをとりながら、うま~~く現代を切り取れている。友達はみんな困ってばかりで、迷惑そう。

 それでも、道路をガーッツと走る場面の疾走感ったらない。最近の映画では秀逸。

 で、すごく感じたのが、これって青春映画だなぁ。で、先進国の映画って、いよいよ青春映画が10代後半→30歳くらいまでに、こう、範囲が広がってきてるよね。このあともこう言う傾向で、アラサー自分探し青春映画の傑作が生まれてくるんだろうか。

 映画の可能性をとっても感じさせてくれる傑作です。間違いなく。

 フランシス・ハの「ハ」の意味が洒落てて、ユーモアたっぷりで、ラストで明かされる。もう笑っちゃうくらい、このタイトルでなくちゃダメって感じですよ。

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ジプシーの暮らしを知るために・・・「パプーシャの黒い瞳」

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 ジプシーというと、まあ、ロマという別名、旅から旅の芸人集団、差別された対象として・・・このくらいが一般の理解と思います。自分もそんな感じですが。その深部に迫るとともに、文字をもたないジプシーの中のはじめての詩人である、パプーシャの一生を描いた
歴史大作のような香りを持った作品です。パプーシャを演じる女優の味がすべてを決めている感じですが、ジプシーのマフィア的な組織の感じであるとかジプシーと一般の人間をつなぐ役割の作家の苦悩であるとか、そういったものを随所にの散りばめて、まあ、啓蒙的というようなきらいもありますが、面白い作品に仕上がっています。

 松本シネマセレクトで観たのですが、上映後に、ジプシーに詳しい大学のせんせの解説もあったようで、そういう素材なんだなと納得した次第です。

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「あん」は河瀨監督の会心の作

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 樹木希林の最後の作品などという、ネットで流れているうたい文句に誘われて見に行ってきました。お話は、ハンセン病のおばあさんが、一度、客商売をやってみたくて、どら焼き屋に就職してあんこを煮るというものです。

 過去がありそうなどら焼き屋店長を永瀬正敏がいい味で好演しています。自堕落な生活・・・実際に監督はさせたそうですが・・・酒におぼれて、あんこも作らず、業者から購入したで済ませています。

 河瀨監督の好きな、玄人好みの難解さや、なんだかよくわからない設定などは、姿をひそめ、世相を映している風な登場人物に、ハンセン病という社会問題を、上手にマッチさせて、丁寧な描写による芸術性や、シーンへのこだわりを究極まで追い求める姿勢を貫いています。

 会心の一作といっていいでしょう。欧米の評価は取れないでしょうが、国内でのセールスに結びつく貴重な作品になりました。おめでとう・・・ですね。

 

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ゆらりゆらゆら「白河夜船」

 久しぶりの映画です。またまた安藤サクラ主演で、最近安藤さんの映画にはまってますから、勇んで見に行きました。白河夜船ってもともと「知ったかぶり」という意味だと初めて知った感じです。この映画では、よく使われる「ぐっすり寝込んでしまう様」で、使われていますが・・・。

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 まあ、映画は、ほんとにユラユラ揺れている小舟の中で、ゆっくり寝てしまったような、そんな映画で、とっても心地よかったです。実際、ほんとに寝てしまったのかもしれません(笑)。安藤さんのいつものリアリティのある演技は影をひそめ、アンニュイな雰囲気を上手に醸し出していて、何とも不思議な映画でした。

 このふたり、「家族のくに」では兄妹の役でしたが、井浦新が森本レオのような雰囲気の不倫野郎の無責任体質を、非常にうまく表現していて、芸達者二人で、とても上質な空間を作り出してくれていて、う~~んと、大人が唸る恋愛映画の秀作になってました。そういう意味で、とてもよかったですね。

 

 

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